「広島2-16ソフトバンク」(19日、マツダスタジアム) 目を覆いたくなるような惨敗だった。広島は今季ワーストの16安打16失点で大敗。唯一、本拠地を盛り上げたのは中村奨成外野手(26)だった。五回に代打で2号2ラン。プロ初本塁打を放った…
「広島2-16ソフトバンク」(19日、マツダスタジアム)
目を覆いたくなるような惨敗だった。広島は今季ワーストの16安打16失点で大敗。唯一、本拠地を盛り上げたのは中村奨成外野手(26)だった。五回に代打で2号2ラン。プロ初本塁打を放った2021年と同じ日に、1軍生き残りへアピールした。チームは3カード連続の負け越しで勝率5割に逆戻り。20日からの交流戦最終カード・楽天3連戦(マツダ)で意地が見たい。
今季ワーストの数字が並んだ一戦で、中村奨が一筋の光をもたらした。試合開始時の気温30度。6月とは思えないほどの暑さでも、必死に声援を送り続けてくれる本拠地の鯉党のもとへ、意地のアーチを届けた。「最近、結果も出ていなかった。1打席でしたけど、何とかつなげるように打席に入っていました」と険しい表情のまま、言葉を並べた。
6点を追う五回2死二塁だ。ドミンゲスの代打として打席へ。相手先発・大関に対しファウル2球で追い込まれ、腹をくくった。「簡単に追い込まれたので、半分諦めながら。でも、何とか食らいついて事を起こせるように考えてやってました」。カウント3-2からの6球目。低めのフォークを捉えると、打球は左中間席最前列に着弾。5月13日・巨人戦(マツダ)で戸郷から放って以来となる2号2ランをたたき込み、ゆっくりとダイヤモンドを回った。
セ・リーグ相手に無双を続けていた左腕の記録を止める一振りだった。大関は交流戦に入って、この日の四回まで20イニング連続で無失点。自身は試合前まで対右投手の打率・324に対して、対左投手は打率・200。苦手としていたサウスポーから価値あるアーチを描いた。
今季は一時、「1番・中堅」の座をつかみかけるなど覚醒の気配を漂わせていたが、6月に入ってバットは湿りぎみ。一方で、ライバルの大盛が8試合連続安打をマークするなど、走攻守において猛アピール中。その活躍を目の当たりにし「悔しい気持ちもあった」と燃えないわけはなかった。「去年までだったら、このまま2軍に落ちることがあったので、それだけはならないように常に思っています」と危機感が中村奨を突き動かしている。
4年前の21年6月19日は東京ドームでのDeNA戦で、代打でプロ初本塁打を放った。「自分のことだけで言えば、一本出たので良かったですけど、やっぱり勝ちたい。そっちの思いの方が大きいです」と唇をかんだ。自身にとってメモリアルな日に放ったプロ通算4本目の本塁打。1軍生き残りを目指す背番号96が、がむしゃらに食らいついていく。