阪神の伊藤将司投手(29)が交流戦で今季初勝利を挙げ、復活を印象付けた。1年目から10勝を記録し、3年目までで29勝。…

 阪神の伊藤将司投手(29)が交流戦で今季初勝利を挙げ、復活を印象付けた。1年目から10勝を記録し、3年目までで29勝。ただ、昨年は4勝に終わった。今年も春先は苦しんでいたが、きっかけになったのは投球前の顔の動き。一塁側を少しだけ向くという細かい動作ではあるが、これが左足のタメにつながっていた。

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 右足を高く上げると、スッと一塁側に顔を向ける。これまでの伊藤将にはなかった動きだ。「ずっと前を見ていたんですけど、横を向いてからタメができた感じはする」。小さな変化に思えるが、これが大きなきっかけになっていた。

 着手したのは5月に入った頃。ファームの試合で投げるたびに試行錯誤を繰り返していた時だった。何かを参考にしたわけではない。「普通に自分の中でやりながらですね。何かがハマったんでしょうね」。見た目では分からない。本人も「ほぼ感覚」と言うぐらいだ。

 変化として表れたのは直球の球速。「常時(平均球速)も戻ってきた感じですね」。昨季は130キロ台の真っすぐが多かった。それが今年は140キロ台前半が平均的に出ている。「ストレートが良くなったのが、そのきっかけかなと思います」と確かな手応えを感じた瞬間だった。

 左足にタメをつくることが狙い。不調時は「それができていなかった」。タメという言葉はよく聞くが、何がいいのか。軸足を意識して、ただ単純に重心をかければいいというわけでもない。左腕が分かりやすく、解説してくれた。

 「蹴り出せるんじゃないですか。体が先にいくと、蹴るのが弱くなるんで蹴れないじゃないですか。下から蹴り出せるようになってから良くなったと、自分では捉えています」

 一石二鳥にもなった。今季初先発後、伊藤将の投球を見ているとタイミングを変えている。長くタメたり、クイックで投げたりとフォームで緩急をつけているのだ。「タイミングをずらせるというのも少しはあると思いますね。それでずれてくれたらいいなと」。これもうまくタメがつくれて、球威のある球を投げられるからこそできる技だった。

 エースの村上も三塁側を向くが、「バランスを確かめるため」と少し意図は違う。伊藤将もアマチュア時代に試したことはあったという。「その時はパッとしなかった」。今回はガラリと変わった。過去の経験にとらわれず、必死に模索した結果だ。復活。いや、進化した左腕が先発陣の層を厚くする。(デイリースポーツ・今西大翔)