操作困難なマシンに苦心し、スピードを上げきれずに低迷する角田。(C)Getty Imagesフェルスタッペンも問題視した…

操作困難なマシンに苦心し、スピードを上げきれずに低迷する角田。(C)Getty Images

フェルスタッペンも問題視した『RB21』の異変

 原因不明の不振にフラストレーションが溜まる一方だ。

 現地時間6月28日、F1第11戦のオーストリアGPの公式予選が行われ、レッドブルの角田裕毅は、予選1回目(Q1)でタイムを伸ばせず、まさかのQ1敗退。29日に迎える決勝は、最後尾(18位)からのスタートとなった。

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 前日のフリー走行2回目(FP2)で7番手、公式予選前に行われた同3回目(FP3)で9番手の好タイムをマークし、“本番”での躍進に手応えを掴んでいた角田。だが、25歳の操舵するマシンは停滞した。

 Q1の最初のアタックで1分5秒386をマークし、全体5番手につけた角田だが、その後は続々とタイムを上げていったライバルたちに弾き出されて後退。逆転を狙った2度目のアタックもラップタイムは1分5秒369と伸ばせず、レッドブル昇格後3度目となるQ1敗退となった。

 この屈辱的な結果に「フリー走行までは順調にきていただけに、このような結果になって本当にフラストレーションがたまる。なぜこうなってしまったのか。チームのエンジニアに聞いてみないとわからない」と苛立ちを募らせた角田。操作困難とされるマシン『RB21』を最大限に生かしきれていない現状を嘆いた。

 3戦続けて入賞を逃し、ポイントも獲得できない不振にあえぐ角田。今GPでは是が非でもポイント獲得という“結果”を手にしたいところだったが、やはり『RB21』の操作に手を焼いてしまった。

 レース後に米モータースポーツ専門メディア『motorsport.com』が伝えた角田のコメントには、どれだけ改良を重ねても後退し、八方塞がりになりつつある現状へのやりきれない悩みがにじみ出る。

「後方からスタートする決勝には正直、もううんざりしている。実際、ロングランとなる決勝は(予選とは)別のシナリオがあり、まだまだ難しい。ポイントを獲得できるように頑張るけど、マシンの問題を考えるだけで本当にイライラする」

 もっとも、マシンへのフラストレーションは、他でもないエースドライバーであるマックス・フェルスタッペンも隠そうとはしていない。オランダのモータースポーツ専門サイト『Racing News365』によれば、公式予選後に「とにかくバランスがなかった。コーナーによって前がない、後ろがないって感じで。だから、リズムをつかむのがすごく難しかったし、それがベンチマークになったと思う」と指摘。「走ったラップごとにマシンの挙動が少しずつ違っていて、理想的とは言えなかった」と断じた。

角田に受けるマルコ博士の厳しい言葉

 フェルスタッペンが憂いたマシンの不安定さは、「車のバランスがおかしかった」とする角田の証言とも一致する。FPの時点で「マシンのフィーリングはよかった」と振り返る25歳は「今日は2回目のアタックで生じた異変を最後まで適切に調整できなかった。最初のアタックで感じたものとは完全に異なっていたんだ」と訴えている。

 所属する二人がマシンの“異変”を指摘している。これにはレッドブルの顧問を務めるヘルムート・マルコ博士も、オーストリアの公共放送『ORF』で「我々のマシンの作動範囲が狭すぎる。そして限界域で非常に不安定なのは明白」とキッパリ。「今の我々は、限界が近づくと、コースアウトするか、ギリギリで安定させるかの綱渡り状態だ」とも語っている。

 ただ、マルコ博士は角田の能力にシビアな評価も下す。今予選の結果を踏まえて「最初のセットアップであれば、十分に上位進出の射程圏内で、Q3進出も可能だったはずだ」と指摘。「変化するトラック状況と車の状態の下でユウキは単純に対応ができていない」と断じ、こう続けている。

「ユウキは十分な速さで適応することに、今も深刻な問題を抱えている。マックスならそれができて、それを補うことができる。(角田が)明日のポイント獲得の可能性はない」

 マルコ博士からかつてないほどに厳しい言葉を浴びせられた角田。現状を打破するためには、セットアップの最適解をいち早く見出す必要があるが、そのための時間は残されているだろうか。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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