F1第11戦オーストリアGPレビュー(後編) 18番グリッドから臨むオーストリアGP決勝で、期待できるものはそれほど多く…

F1第11戦オーストリアGPレビュー(後編)

 18番グリッドから臨むオーストリアGP決勝で、期待できるものはそれほど多くはない。

 それでも、レースペースさえよければ中団グループから入賞圏内へのジャンプアップが可能なのは、ここ数戦のハースやザウバーが成し遂げているレースを見れば明らかだ。そして角田裕毅(レッドブル)自身も、レースのなかでRB21の学習を進めることができる。


角田裕毅に入賞するチャンスはあったのだが......

 photo by BOOZY

 1ストップで走りきるにはかなり難しい路面温度50度という暑さで、中団では捨て身のソフトタイヤでスタートするドライバーも散見されるなか、角田はミディアムを選択して正攻法のレースを選んだ。ミディアムを30周程度保たせられれば、1ストップ作戦も可能になる。

 スタート直後の混乱を縫って15位まで上がった角田は、ソフトスタート勢がピットインすると10位へ。

 15周目のターン3でランス・ストロール(アストンマーティン)をオーバーテイク。しかしその際にフロントウイングに負ったダメージが影響したのか、ミディアムタイヤのグリップ低下が予想以上に激しく、18周目にピットイン。ただ、翌周ピットインしたエステバン・オコン(ハース)が3.98秒のスローストップだったこともあり、アンダーカットに成功した。

 アウトラップのオコンにDRS(※)を使われて先行を許したものの、しばらくはオコンと同等のペースで走り続けた。

※DRS=Drag Reduction Systemの略。追い抜きをしやすくなるドラッグ削減システム/ダウンフォース抑制システム。

 しかし、30周目のターン4でペースの遅いフランコ・コラピント(アルピーヌ)を抜こうとして接触。インへの飛び込みが遅くて抜ききれず、2台並んで抜けていこうとした先でアンダーステアが出てアウトに流れていく角田の左フロントが、立ち上がりでインを閉めてくるコラピントの右リアに接触した。

 これで角田はフロントウイングを完全に壊してピットインを強いられ、ハードタイヤをわずか12周で捨てなければならなくなった。それに加えて10秒加算ペナルティも科され、ここで角田の入賞圏を目指すチャンスは潰えた。

【ペースを維持することは不可能】

「あれは僕のミスです。不必要な接触でしたし、僕が悪いです。あの状況のなかでは、あと1周待つべきだったと思います。とてもプアな仕掛け方だった。こういう結果になってしまって、チームに対してもものすごく申し訳なく思っています」

 その後、角田の前を走っていたオコンが10位入賞を果たしたことや、最後尾スタートのニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)が巧みにトラフィックをかわしてフリーエアで走り、2ストップ作戦で9位入賞したことを考えれば、角田も9位争いを繰り広げるチャンスはあったはずだった。

 ミスについては全面的にチームに謝罪した角田だが、予想以上にタイヤのグリップ低下が激しくペースが遅かったことについては、原因を究明することが急務だと言う。

「最初の数周は、かなりいいフィーリングでした。でもしばらくすると、タイヤがラップごとどころかコーナーごとに溶けていってしまうような感触で、毎ラップどんどんグリップが下がっていったんです。

 あの状況では、ペースを維持することは不可能でした。今週末はいろんなことを試していたので、こういう結果になった理由はこれからしっかりと分析したいと思います」

 マックス・フェルスタッペンが1周目に追突されてリタイアしてしまっただけに、比較データがないのはつらいところ。フロントウイングのダメージによるものなのか、ドライビング面で改善すべき点があるのか、角田はすでに次のステップへと目を向けている。

「予選ペースはレースごとにどんどん向上していますので、それはいいことだと思います。でも、レースペースに関しては別で、特に今日はタイヤのグリップが全然維持できていなかった。

 ドライビングスタイルの面で何か違ったやり方があるのか、マックスが僕とまったく違うやり方をしているところが何かないのか──。試せることはすべて試していって、改善努力を続けていきたいと思います」

【速さと才能はすでに証明してきた】

 目の前の結果に落ち込みたくなる日もあるだろうが、角田はそんな素振りは見せない。

 速さと才能はすでに証明してきたからこそ、そこに対する自信は揺るがない。問題は、その速さをレッドブルというマシンで結果に結びつけるにはどうすればいいか、ということだけだ。

 角田が見ているのは過去の自分ではなく、今の改善すべき点だけだ。その結果として、どんな未来の自分が待っているのかは、誰にもわからない。