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 マリーク・ビーズリー(デトロイト・ピストンズ)に賭博関与の疑いが持たれている。

『ESPN』のシャムズ・シャラニア記者によると、米東部地区の連邦検事局はNBAの試合におけるプロップベット(選手の個人成績の賭け)に関連した賭博容疑で、ピストンズの躍進に貢献した頼れるガードの捜査を進めているという。

 ビーズリーの賭博疑惑は、2023-24シーズンに遡る。このシーズン、同選手はミルウォーキー・バックスに在籍して主力として活躍し、自己最多となる77試合に先発出場、平均11.3得点、3.7リバウンド、1.4アシスト、3ポイント成功率41.3パーセントを記録していた。

 ギャンブル業界の情報筋は、『ESPN』のデービッド・パーダム記者に本件の詳細を語った。同記者が入手した情報によれば、2024年1月頃から複数の米大手スポーツブックにおいて、ビーズリーの個人スタッツに異常なほどの賭けが集中していることを検知。その一例として、2024年2月1日(現地時間1月31日)に行われたバックス対ポートランド・トレイルブレイザーズ戦では、「ビーズリーのリバウンド数が2.5本未満」というオッズが試合前にプラス120前後からマイナス250前後へと大きく値を動かしており、これは莫大な賭け金が流れ込んだことを意味している。

 なお、この試合でビーズリーは6本のリバウンドを記録しており、問題視された賭けはすべて不的中。それでもブックメーカー各社は、この変動を“異常オッズの検知”と認識し、各社は連邦検察当局に情報を提供。これを受けて、当局は2024年春から捜査を開始している。

 報道によれば、ビーズリー側の弁護士は選手の一部記録を自主提出し、捜査当局は電子記録・銀行口座・通話履歴をはじめとするその他必要な情報を召喚状で回収中だという。この捜査について、現状では起訴や逮捕はなく、選手側は潔白を主張し、ビーズリーの弁護士スティーブ・ヘイニー氏も推定無罪を強調している。

「捜査は起訴と同義ではありません。マリークには米国憲法の下、無罪推定の権利があり、現時点で彼は何ら罪に問われていません」

 ピストンズはビーズリーに関する捜査を認識しており、コメントはNBAに委ねると回答。それを受けたスポークスマンのマイク・バス氏は「我々は連邦検察の捜査に協力している」と述べ、球団とリーグ共に選手が捜査下にある事実を認めている。

 また、ビーズリーは今夏に制限なしフリーエージェントとなり、ピストンズと3年4200万ドル(約60億4100万円)の再契約交渉を進めていたとされているが、捜査の報を受け話し合いは一時停止中となっている模様だ。

■NBA選手の賭博問題


ここ数年、NBAでは一部選手と賭博との関与が騒がれている。

 2024年4月、NBAは公式リリースでジョンテイ・ポーター(元トロント・ラプターズ)を永久追放すると発表。ポーターは、機密情報をスポーツベッターに漏洩したほか、自ら出場時間を制限するなどプレーを操作してプロップベットの的中に加担し、代理人名義口座を通じてNBAの試合にベッティングを行っていた。選手の永久追放は、NCAA時代に賭博に関与していたことが発覚した1954年のジャック・モリナス(フォートウェイン・ピストンズ)以来70年ぶりの事件となり、ポーターの賭博関与は後に、低年俸や2way契約選手のプロップベットをブックメーカー側が停止することにまで発展している。

 また、2023年にはテリー・ロジアー(マイアミ・ヒート)も各種スタッツの異常投票が確認されたことで捜査対象に。しかし、本件については『ESPN』のシャラニア記者が、捜査は非活性化され、同選手の嫌疑は晴れたとしている。

 ビーズリーは、ミネソタ・ティンバーウルブズに在籍していた2020年、元妻であるモンタナ・ヤオとNFL選手のスア・クレイブンスが関係を持ったとして、クレイブンスに脅迫行為を行い、ビーズリーは暴行と脅迫の重罪で120日間の刑期を務め、NBAからも12試合の出場停止処分を受けた過去がある。

 昨シーズンはピストンズで全82試合に出場し、フランチャイズ記録となるシーズン319本の3ポイントを成功させるなど、好調だったビーズリー。選手、球団共にさらなる飛躍が期待されているタイミングともあって、疑惑に終わることを願っている関係者も少なくないはずだ。

文=Meiji