◇米国男子ツアー◇ジョンディアクラシック 事前(2日)◇TPCディアラン(イリノイ州)◇7289yd(パー71)前週の…

金谷拓実は大逆転を諦めていない

◇米国男子ツアー◇ジョンディアクラシック 事前(2日)◇TPCディアラン(イリノイ州)◇7289yd(パー71)

前週のミシガン州デトロイトから今週の会場までは、車で約6時間の道のりになる。金谷拓実が「キャディさんが運転してくれたので、僕は座っていただけですよ」と涼しい顔で笑ったのは、バッグを担ぐライオネル・マティチャックさんへの感謝だけではないだろう。

前週からレギュラーシーズン最終戦「ウィンダム選手権」(ノースカロライナ州セッジフィールドCC)まで6連戦。2週後には今季メジャー最終戦「全英オープン」(北アイルランド・ロイヤルポートラッシュGC)を挟み、移動は直線距離にして合計1万4478kmにのぼる。「でも、試合に出られるって、ホントに今までなかったですから。一打で人生が変わると思っているので、頑張りたい」と気力がみなぎる。

昨季は日本ツアーの賞金ランク上位者として挑戦するはずだった欧州ツアーで出場機会がなかなか巡ってこなかった。涙の最終予選会突破で扉をこじ開けたPGAツアー1年目も、限定的な資格からスタート。これまで味わってきた、試合に出られないもどかしさを思えば、タフな連戦だろうと前のめりになる。出場できれば、フェデックスカップポイントランキング146位からの逆転チャンスもある。ハイレベルな競争でも諦める理由はない。

出場5試合ぶりの予選通過となった前週「ロケットクラシック」は通算11アンダーで46位フィニッシュだった。「150人出ていても、130人くらいは優勝できるチャンスがある」と表現するPGAツアーの分厚い選手層。軸足を置いて戦うことで、トップ・オブ・トップのプレーヤーだけでなく、中堅どころのレベルの高さを実感する。

ドッグレッグのホールも多く、ティショットにおけるクラブや球筋の選択に頭を使いそうなTPCディアラン。青々としたラフもかなりの長さだが、1年前は優勝スコアが通算28アンダーまで伸びた。「そんな簡単じゃないよな…」。コースをチェックしながら前年の数字に驚かされるのも、これで何度目だろうか。

なかなか予選を通れなくても、シーズン開幕から毎日少しずつ成長するという目標を忘れたことはない。ロープ内でプレーできない週末も会場に居残り、当たり前のように黙々と練習。成果は数字に出ている。パッティングのスコア貢献度はツアー31位(+0.264)、スクランブリングは同4位(67.66%)。いずれも当初は苦労していた部分だ。「もうちょっとアイアンの精度を上げられれば、もうひとつ上でプレーできると思う」。グリーンも硬いPGAツアーでは、小さなミスが大きな差となって現れる。課題が明確になったのも、スポット参戦時代との違いといえる。

「やっぱり、自分がやりたくてやっていることなので。ずっとここでプレーしたいと思ってやってきて、今年やっとチャンスをつかんだ。プレーしてみて、ホントに1年でも長くここで戦いたいと改めて思っています」。もがきながら、前を見て進む。決して下は向いていない。(イリノイ州シルビス/亀山泰宏)