プロ野球もシーズン半ばに差し掛かりましたが、オリックスの5年目・来田涼斗外野手(明石商)が台頭しています。2日、那覇で行…
プロ野球もシーズン半ばに差し掛かりましたが、オリックスの5年目・来田涼斗外野手(明石商)が台頭しています。2日、那覇で行われた西武戦で勝ち越しの2号ソロ本塁打を放ちました。ここまで30試合に出場しており、キャリアハイだった昨年の54試合出場、189打席を上回る可能性があります。明石商時代は世代を牽引するスラッガーとして注目された存在だった来田選手を振り返っていきたいと思います。
2年選抜で史上初の先頭打者本塁打とサヨナラ本塁打を記録
明石商時代は1年春からベンチ入りし、夏は甲子園出場を経験。分厚い太ももを活かしたフルスイングに魅力されました。1年生のときは強烈なライナー性の打球が中心でしたが、学年が上がるにつれて質が変貌し、本塁打を量産するようになります。
特に2年春(2019年)のセンバツでは神がかりな活躍を見せました。特に準々決勝の智弁和歌山戦では先頭打者本塁打とサヨナラ本塁打を放ち、ベスト4入りを決めました。どちらも達成するのは全国大会では史上初の記録で、サヨナラ本塁打の瞬間、スタンドだけではなく、報道陣も沸いたことを覚えています。この大会では14打数5安打8打点、打率.357と20年のドラフト上位候補を印象付ける活躍でした。
パワーアップの要因は日頃の食トレの成果です。来田選手はセンバツ前のインタビューでこう語っていました。
「朝、昼、夜に二合ずつ、1日計6合の米を毎日食べてました。夜寝る前にもダメ押しでインスタントの焼きそばなどを食べたりして。秋に75キロだった体重は82キロになりました」
そんな来田選手の課題はタイミングの取り方でした。センバツ後の公式戦では厳しいマークを受け、詰まった打球も増えました。そして来田選手はノーステップで打つようになります。明石商の狭間 善徳監督は来田選手の課題についてこう語っていました。
「来田はタイミングの取り方が下手なんです。上手い選手は足をあげながらうまく投手のボ
ール、軌道に合わせることができるのですが、来田は足をあげ合わせるのが課題なんです。センバツの本塁打を振り返ってください。すべてノーステップでしょう?」
センバツの2本塁打の映像を見ると、ノーステップで打ち返していました。狭間監督はノーステップにする意図をイチローと松井秀喜を例に出しながら話しました。
「イチローも日本では振り子打法でしたが、メジャーにいってからは振り子をやめた。松井も、アメリカにきて小さなステップに代わった。速い球に対応するために工夫した結果、皆、ステップが小さくなっていくんです。来田はそういうところを考えてほしいと思い、ノーステップに変えました」
狭間監督は厳しい注文をつけますが、中学時代の来田選手に見惚れた1人でした。
「体の強さもすごかったですし、何よりスイングスピードの速さは今まで見てきた生徒の
中でも記憶にありません。足も速い選手でした」
狭間監督と二人三脚で最終学年での活躍のために準備していた来田選手ですが、コロナ禍でセンバツ、夏の甲子園も中止になり、高校野球を終えました。来田選手はドラフト3位でオリックス指名を受け、目標だった高卒プロ入りを叶えました。
4年目まで苦しむも、ついに今年は打撃開花
来田選手は1年目から活躍を見せます。21年7月13日の日本ハム戦でプロ初打席、初球本塁打と鮮烈なデビューを飾ります。さらに猛打賞を記録しました。高卒新人が初打席初球本塁打は史上初。高校、プロで二度の史上初の記録を作った選手となりました。高校時代より格段にタイミングを取るのがうまくなり、打撃フォームも安定感が増しました。
しかし2年目以降は苦しい時期が続き、高卒3年目は10打数0安打に終わりました。それでも4年目は出場機会が増え、54試合に起用され、170打数36安打、2本塁打11打点という成績でした。高校時代は世代屈指のスラッガーと呼ばれながらも、高卒4年目を終えて、4本塁打、通算54安打。やや物足りない数字です。
5年目は大学に進んだ同級生たちがプロの世界に飛び込んできます。プロでは先輩としてキャリアを歩む来田選手は、今シーズン覚醒の兆しを見せています。特に2日の西武戦の4安打は成長が感じられる試合でした。右、左に打ち返し、最後は決勝本塁打と打撃の幅が広がっていました。
タイミングの取り方も試行錯誤する時期が続きましたが、ここまで30試合で69打数21安打、2本塁打、4打点、4盗塁、打率.304、OPS.790と大きく数字を伸ばしており、このままで行けばキャリアハイの数字が見えそうです。このまま自分に合った打撃フォームを確立させてほしいと思います。
来田選手は高校時代「盗塁技術を磨いて、トリプルスリーを狙える選手になりたい」と語っていました。2日の西武戦の盗塁を見てもスピードがありました。
球団が期待するような走れるスラッガーへ成長できるか。7月以降の来田選手の打席に注目です。